豊胸の目的とリスクが少ない方法の詳細

医師19

豊胸は女性の乳房を人為的に大きくさせる処置を指します。美容外科で行われる審美治療では定番ともいえる豊胸ですが、そのメカニズムや用途は意外と知られていません。また、安全性についても未だに古いイメージが流布しているのが現状です。

理想のバストラインを手に入れるために、豊胸手術の仕組みや安全性について学びましょう。

豊胸手術の歴史と医療技術の進歩について

豊胸手術といえば、まな板のような胸に悩む女性が人為的に乳房を大きくするイメージがありますが、実際は病気や怪我などの理由で乳房を失った女性に対する治療から始まったとされています。初期の豊胸手術は喪失した乳房に似た形状の人工物を装着させ、バストラインを疑似的に再現させるものでした。

やがて身体的には何ら異常が無い女性が自身の乳房の形状に不満を持ち、外科手術で改善させる美容整形としての豊胸手術が広まりましたが、当時の豊胸手術は安全性を無視したものだったので多くの問題が浮上しました。乳房の弾力に近いという理由でシリコンやパラフィンなどの化学物質を乳房の内部に直接注入していたため、異物の侵入による拒絶反応が起き、乳房の壊死などの重大な健康被害が続発するに至りました。

その後、医療用のシリコンパックにジェル状のシリコンや生理食塩水を封入した乳房インプラントが開発されたことによって手術の危険性は大きく軽減され、費用も安価になったことから手軽にボディラインを改造できる方法としてさらに豊胸手術の知名度は上がりました。

日本でも豊胸手術といえば胸に乳房インプラントを入れて底上げするというイメージが定着しています。化学物質を直接注入する旧来の方法と比べ、体が拒絶反応を引き起こす可能性が非常に低いのが利点です。しかし、個人の体質によっては痛みや炎症などの不具合が起こることもあり得るので、決して万能な方法ではありません。

また、日本では豊胸手術は医療行為に含まれない審美治療と見なされているので、費用の全額を患者が負担することになります。

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安全に乳房を大きくする方法と注意点について

女性の乳房は古くは豊穣のシンボルと捉えられ、現在では男の気を引くセックスシンボルと見なされる傾向があります。女性の間でも乳房の大きさに悩む人は少なからず存在しており、巨乳や貧乳などの俗語が生まれるほど、乳房の大きさは重要な事柄になっています。

美容外科の多くが豊胸手術を手掛けているのは、それだけ乳房の大きさに悩んでいる女性が多いことの証左です。しかし、豊胸手術は医療技術が進歩したとしても体内に異物を入れる行為なので、体に負担がかかる点は否定できません。

そのため、安全への配慮を第一に考える優良な美容外科を選ぶと共に、豊胸手術についても安全な方法を実施することが重要になります。現在の豊胸手術は拒絶反応が起きにくいという理由で、患者本人の脂肪を乳房に注入する方法が広く普及しています。

医学的な見地では自分の体の一部である脂肪を乳房の部分に移動させるだけなので、異物を入れる豊胸手術と比べれば高い安全性を持っているのが大きなメリットです。また、脂肪で形成されている乳房を脂肪で大きくすることにより、最も自然な質感に仕上げられるのも他の方法には無い利点と言えます。

しかし、体の他の部分から脂肪を取り出すことになるので、その部分だけが不自然に凹んでしまう欠点もあります。また、脂肪に混在する細胞の死骸などのゴミも混ざってしまうので、稀に脂肪が固くなったり痛みが生じるなどの不具合が起こるので注意が必要です。

技術の進歩によって安全性が増した豊胸手術と費用の問題

自身の脂肪を乳房に注入させる方法は乳房インプラントを入れる方法と比べると健康面でのリスクが少ないのが利点です。しかし、抽出した脂肪に老廃物などのゴミが混ざっていると健康被害に見舞われる可能性があることから、決して最善の方法とは断言できない問題がありました。

そのため、抽出した脂肪の安全性を向上させるための方法が研究されるようになりました。その結果、現在では抽出した脂肪を医療用のろ過機に通して不純物を取り除いたり、必要な成分を取り出して培養させた物を使う方法が普及しています。

抽出した脂肪をそのまま乳房に入れる方法と比べて安全性が格段に向上しているのが大きな利点です。また、仕上がりも従来の脂肪注入と殆ど変わらないので、脂肪の弾力性を活かした自然な仕上がりになります。新しい方法による豊胸手術は安全性が増したことにより、患者の体に殆ど負担がかからなくなりました。

拒絶反応も起きないことから最も安全な方法手術とされることもありますが、その一方で新たな問題点も浮上しています。脂肪をろ過したり必要な成分だけを抽出、培養する作業は高額な費用がかかるため、安易な実施は困難です。

また、時間もかかるので手術を受ける人は入院することになります。高額な手術費を捻出できない人や時間を割くのが難しい人には現実的な選択肢とは言えず、コスト高や作業の長期化の解消が今後の課題です。

安全な豊胸手術は病院選びも重要

同じ豊胸手術でも医師の技術力が結果の良し悪しを大きく左右します。豊胸手術は医療行為に該当せず、安全管理に関する具体的なガイドラインも定まっていません。それぞれの病院の独自裁量に任されているのが現状なので、安全に理想のバストラインを得るには病院選びに細心の注意を払う必要があります。

病院によっては知名度の高さや費用の安さを謳う所もありますが、豊胸手術は何よりも安全性が重視されるので、安易に即決せず、病院の評判を慎重に調べて判断することが大切です。優良な病院は技術力が高いだけではなく、アフターケアも充実しています。

豊胸手術は人為的に乳房の形状を変える行為なので、体に負担がかかるのは避けられません。その負担による弊害を軽減させるアフターケアに気を配っている病院なら、安心して手術を受けることができます。

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理想のバストラインにこだわり過ぎないことも大切

安全な豊胸手術を受けるには病院選びだけではなく、手術を受ける自分自身の考え方も重要なポイントです。結果に満足できずに何度も手術を繰り返すケースがありますが、これは病院側の技術力の他に患者側も理想のイメージが強すぎるのが問題です。

わずかでもイメージと違うことが気になると、それが乳房全体に不具合があると思うようになり、遂には手術を繰り返す事態に陥ってしまいます。体への負担が大きく費用も嵩むことから、豊胸手術を受ける人は理想のイメージにこだわり過ぎないようにすることが大切です。